知的障害の障害認定基準

D 知的障害
(1) 知的障害とは、知的機能の障害が発達期(おおむね18歳まで)にあらわれ、日常生活に持続的な支障が生じているため、何らかの特別な援助を必要とする状態にあるものをいう。

(2) 各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりである。
障害の程度 障 害 の 状 態
1 級
知的障害があり、食事や身のまわりのことを行うのに全面的な援助が必要であって、かつ、会話による意思の疎通が不可能か著しく困難であるため、日常生活が困難で常時援助を必要とするもの

2 級
知的障害があり、食事や身のまわりのことなどの基本的な行為を行うのに援助が必要であって、かつ、会話による意思の疎通が簡単なものに限られるため、日常生活にあたって援助が必要なもの

3 級
知的障害があり、労働が著しい制限を受けるもの

(3) 知的障害の認定に当たっては、知能指数のみに着眼することなく、日常生活のさまざまな場面における援助の必要度を勘案して総合的に判断する。また、知的障害とその他認定の対象となる精神疾患が併存しているときは、併合(加重)認定の取扱いは行わず、諸症状を総合的に判断して認定する。

(4) 日常生活能力等の判定に当たっては、身体的機能及び精神的機能を考慮の上、社会的な適応性の程度によって判断するよう努める。

(5) 就労支援施設や小規模作業所などに参加する者に限らず、雇用契約により一般就労をしている者であっても、援助や配慮のもとで労働に従事している。したがって、労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、現に労働に従事している者については、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況等を十分確認したうえで日常生活能力を判断すること。

知的障害の障害認定基準の解説

① 知的障害とは何か(定義のポイント)

知的機能の障害が発達期(おおむね18歳まで)にあらわれ
日常生活に持続的な支障があり、
何らかの特別な援助を必要とする状態

実務上の重要ポイント

  • 18歳までに発症していることが大前提
  • 後天的な認知症・高次脳機能障害とは区別される
  • 「知能が低い」だけでは足りず、
    👉 生活上の支障と援助の必要性が核心

② 等級ごとの考え方(全体像)

知的障害の等級判断は、非常にシンプルに言うと、

  • 1級・2級:日常生活の援助レベル
  • 3級:労働の制限レベル

で分かれます。


③ 各等級の具体的な意味

【1級】最重度レベル

基準文の要点

  • 食事・身の回りのことに全面的援助が必要
  • 会話による意思疎通が不可能または著しく困難
  • 常時援助が必要

実務的な理解

  • 生活のほぼすべてを他者に依存
  • 単独での生活は不可能
  • 意思表示・判断が極めて困難

👉 「常に付き添い・介助が必要な状態」


【2級】日常生活に援助が必要なレベル

基準文の要点

  • 基本的行為(食事・身支度等)に援助が必要
  • 意思疎通は簡単な会話に限られる
  • 日常生活に援助が必要

実務的な理解

  • 一部は自分でできるが、
    👉 放っておくと生活が回らない
  • 金銭管理・服薬管理・対人対応が苦手
  • 家族や支援者の見守り・援助が不可欠

👉 「見守りと支援がないと生活が破綻する状態」


【3級】労働が著しく制限されるレベル

基準文の要点

  • 知的障害があり、労働が著しい制限を受けるもの

実務的な理解

  • 日常生活は概ね自立
  • ただし、
    • 一般就労が難しい
    • 支援付き就労に限られる
    • 仕事の内容・環境が大きく限定される

👉 「生活はできるが、普通に働くのは難しい状態」


④ IQだけでは判断しない(極めて重要)

基準(3)で明確に示されています。

知能指数のみに着眼しない

実務で見るべきポイント

  • 食事・身支度・金銭管理
  • 服薬管理
  • 対人関係・意思疎通
  • トラブル対応力
  • 社会的ルール理解

👉 IQが高めでも、生活能力が低ければ上位等級になり得る
👉 IQが低くても、生活が自立していれば下位等級になることもある


⑤ 他の精神疾患との併存について

併合(加重)認定は行わない

つまり

  • 知的障害 + 発達障害
  • 知的障害 + 精神疾患

があっても、

👉 症状を合算して等級を上げることはしない
👉 全体像を総合評価


⑥ 就労していても不利とは限らない

基準(5)が非常に重要です。

よくある誤解

「働いている=軽い」

これは誤りです。

認定で見るポイント

  • 一般就労か、福祉的就労か
  • 業務内容の単純さ
  • 指示の具体性・反復性
  • 周囲の支援・配慮の有無
  • 他の従業員との意思疎通状況

👉 援助や配慮のもとで働いているなら、能力向上とは直結しない


⑦ 知的障害認定の本質

認定の軸はこの3点です

  1. 発達期からの障害であるか
  2. 日常生活にどれだけ援助が必要か
  3. 社会的適応(特に労働)がどれだけ制限されているか

等級イメージを一言で

  • 1級:生活全般に全面介助
  • 2級:生活に継続的な援助が必要
  • 3級:生活はできるが、労働が大きく制限

療育手帳・特別支援学校歴と障害年金の関係

よくある誤解から先に

まず、相談現場で本当に多い誤解です。

  • 「療育手帳があるから障害年金はもらえる」
  • 「特別支援学校に通っていた=2級以上になる」
  • 「療育手帳がないと障害年金は無理」

👉 いずれも誤りです。


① 療育手帳と障害年金は「別制度」

制度の違いを一言で

  • 療育手帳
    👉 福祉サービス利用のための制度(自治体判断)
  • 障害年金
    👉 生活・就労への支障を補うための年金(国の年金制度)

重要ポイント

  • 療育手帳の有無・区分(A・Bなど)は
    障害年金の等級を直接決めません
  • あくまで
    👉 参考資料のひとつにすぎません

② 療育手帳がある場合の実務的な意味

プラスに働く点

  • 発達期(18歳以前)からの障害を示す有力資料
  • 長期的な支援歴・生活上の困難を裏付けやすい
  • 診断の一貫性を説明しやすい

ただし注意

  • 療育手帳が軽度(C判定)でも
    👉 障害年金2級になることはある
  • 逆に重度(A判定)でも
    👉 日常生活が自立していれば不支給になることもある

③ 療育手帳が「なくても」障害年金は可能

よくあるケース

  • 子どもの頃に正式な手帳申請をしていなかった
  • 学校・家庭内で支援され、制度につながっていなかった
  • 知的障害と認識されずに大人になった

👉 療育手帳がなくても不利とは限りません

代替資料として重要なもの

  • 母子手帳
  • 学校の成績表・通知表
  • 特別支援学級・通級指導の記録
  • 家族の申立書

④ 特別支援学校・支援学級歴の位置づけ

これも「決定打」ではない

  • 特別支援学校卒=2級確定 ❌
  • 普通校卒=障害年金不可 ❌

実務上の意味

  • 教育段階で継続的な支援が必要だった証拠
  • 学習面・生活面・対人面の困難を裏付ける材料
  • 発達期からの障害の一貫性を示す

👉 「障害の重さ」よりも「支援が必要だった事実」が重要


⑤ 学歴と等級の関係(誤解が多い点)

学歴・教育歴障害年金との関係
特別支援学校参考資料にはなるが等級は別判断
支援学級・通級発達期からの困難を示す重要資料
普通校卒業不利ではない
高校・大学卒業受給不可を意味しない

👉 「学歴が高い=軽い」とは判断されない


⑥ 認定で本当に見られるポイント

認定機関が最終的に重視するのは、次の3点です。

  1. 発達期から現在までの一貫した困難
  2. 現在の日常生活における援助の必要性
  3. 社会的適応(特に就労)の制限

療育手帳や学校歴は、
👉 この3点を裏付けるための材料に過ぎません。


⑦ 療育手帳・特別支援学校歴のまとめ

療育手帳や特別支援学校の経歴は、障害年金の判断において重要な参考資料にはなりますが、それだけで受給の可否や等級が決まるわけではありません。
障害年金では、現在の日常生活や就労にどの程度の支障があり、どのような援助が必要かを総合的に判断します。
療育手帳がない方や、普通学校を卒業された方でも、障害年金の対象となる可能性は十分にあります。

20歳前障害で失敗しやすい3つのポイント

(知的障害・発達障害・精神障害 共通)

失敗①「診断名や手帳があれば大丈夫」と思ってしまう

よくある勘違い

  • 療育手帳があるから通るはず
  • 発達障害・知的障害の診断があるから安心
  • 特別支援学校を出ているから問題ない

👉 これだけでは足りません。

なぜ失敗するのか

20歳前障害では、
「診断名」よりも「生活の実態」が重視されるからです。

  • 日常生活でどんな援助が必要か
  • 一人でできないことは何か
  • 放置すると何が起きるのか

が書類に表れていないと、
👉 実態より軽く評価される危険があります。

社労士視点の対策

  • 診断書任せにしない
  • 病歴・就労状況等申立書で生活実態を補完

失敗②「現在の状態」だけで申請してしまう

よくあるケース

  • 今は落ち着いている
  • 生活リズムは整っている
  • 一時的に就労・通所できている

👉 その状態だけで申請すると危険です。

なぜ失敗するのか

20歳前障害では、

発達期から現在までの一貫した困難

が重要視されます。

  • 子どもの頃の困りごと
  • 学校生活での支援内容
  • 家庭内での見守り・介入

が整理されていないと、

👉 「現在は自立している」と誤解されやすい


失敗③「働いている・通っている=軽い」と判断される

非常に多い誤解

  • 作業所に通っている
  • A型・B型で働いている
  • 一般就労している

👉 =障害が軽い、ではありません。

なぜ失敗するのか

書類上で、

  • 配慮や支援の内容
  • 指示の出し方
  • 失敗時のフォロー

が説明されていないと、

👉 「普通に働けている人」と判断されてしまう


3つの失敗を防ぐためのチェック表

チェック項目確認ポイント
生活実態金銭管理・服薬・対人関係が一人で可能か
支援内容家族・支援者が何をどこまで関与しているか
継続性子どもの頃から現在まで困難が続いているか
就労状況援助・配慮がなければ成り立たない仕事か
書類連携診断書と申立書の内容が一致しているか

社会保険労務士として伝えたい一言

20歳前障害の障害年金では、「病名があるか」「学校歴がどうか」ではなく、
現在の日常生活や社会生活にどの程度の援助が必要かが最も重要です。
正しく伝えられなければ、本来受けられるはずの年金が認められないこともあります。