病気の種類ごとに異なる障害年金の受給基準とは?
障害年金の申請を考えたとき、「自分の病気は対象になるのか?」「どのくらいの障害なら受給できるのか?」という疑問を持つ方は多いです。実は、障害年金の審査基準は“病名”ではなく、“障害の程度”に基づいて判断されます。
しかし一方で、病気の種類ごとに異なる評価項目や判断基準が設けられているため、自分の病気に合った正しい知識を持つことが、受給につながる第一歩です。
今回は、代表的な病気別に障害年金の受給基準の違いをわかりやすく解説していきます。
◆ そもそも障害年金の「受給基準」とは?
障害年金は、国の定めた「障害認定基準」に基づいて、以下の要素をもとに審査されます。
- 初診日
- 保険料納付要件
- 障害の状態(等級判定)
- 病歴・就労状況等申立書や診断書の内容
その中でも最も重要なのが、「障害の状態」、つまりどれだけ日常生活や就労に支障が出ているかという点です。
この障害の状態は、病気の種類により異なる観点で評価されるのが特徴です。
◆ 病気の種類別:障害年金の受給基準の違い
ここからは代表的な疾患を取り上げ、それぞれの障害認定基準の特徴を解説します。
① 精神疾患(うつ病・統合失調症・発達障害など)
【評価ポイント】
- 日常生活の自立度(食事・洗面・買い物・金銭管理など)
- 対人関係や社会適応力(他者との意思疎通、集団行動の可否)
- 就労状況(働けるかどうか、職場での配慮の有無)
【等級の目安】
- 1級:ほとんど寝たきりで、常時介助が必要
- 2級:日常生活が著しく制限されており、就労は困難
- 3級(厚生年金加入者のみ):ある程度働けるが、制限がある
【注意点】
診断書の記載内容により結果が大きく左右されるため、医師への説明や「日常生活の困りごと」を丁寧に伝えることが重要です。
② 内科系疾患(糖尿病、腎疾患、肝疾患、心疾患など)
【評価ポイント】
- 臓器の機能障害の程度(血液検査や画像検査などの客観的データ)
- 日常生活や労働能力への影響(例:透析、入退院の頻度など)
【等級の目安】
- 糖尿病:インスリン使用の有無、合併症(神経障害や失明等)
- 腎疾患:週3回以上の透析が必要 → 2級以上
- 心疾患:心不全の進行度(NYHA分類)に応じて等級が決定
【注意点】
「症状が安定している=障害が軽い」とみなされることもあるため、診断書で長期にわたる影響や疲労度を明記してもらうことが重要です。
③ 神経系疾患(てんかん、パーキンソン病、脳卒中後遺症など)
【評価ポイント】
- 発作の頻度(てんかんなど)
- 運動能力や言語能力の低下
- 日常生活に必要な動作の困難さ(歩行、排泄、更衣など)
【等級の目安】
- 1級:全介助が必要、寝たきりに近い
- 2級:身の回りのことはできても、常に見守りが必要
- 3級:軽度の運動障害があり、就労に制限がある
【注意点】
MRIやCTなどの画像所見も判断材料になりますが、生活面への影響を詳しく記載することが重要です。
④ がん(悪性新生物)
【評価ポイント】
- 治療の継続性(抗がん剤・放射線・手術など)
- 疲労感や体力低下により日常生活が制限されているか
- 転移の有無、進行の程度
【等級の目安】
- 1級~2級:治療を継続しながらも生活が大きく制限されている場合
- 3級:軽度ながらも就労に支障がある場合(厚生年金)
【注意点】
「がんの治療が一段落していても、就労や家事ができない」状態なら対象になる可能性があります。
◆ 病気の名前より「生活の困りごと」が重要
障害年金は「この病名だから〇級」という単純な仕組みではなく、日常生活や仕事にどれだけ支障があるかが中心となって判断されます。
つまり、同じ病名でも「支給される人」と「されない人」が出てくるのは、この点の違いによるものです。
◆ 障害年金の審査で重要なポイント3つ
- 初診日が正確に特定できるか
→ 初診日が曖昧だと、申請が通らない場合もあります。 - 診断書の内容が実情と合っているか
→ 医師としっかり意思疎通し、必要な生活状況を伝えることが大切です。 - 病歴・就労状況等申立書を丁寧に書く
→ ご自身の生活上の困りごとを具体的に書くことで、審査側の理解が深まります。
◆ まとめ:自分の病気に合った「受給戦略」を立てよう
障害年金は、病気の種類ごとに審査基準や見るべきポイントが異なります。
自分の病気に合った準備・書類作成をしないと、必要な支援を受けられない可能性があります。
「自分の病気では難しいかもしれない…」と諦める前に、一度専門家に相談することをおすすめします。
当事務所では、病気ごとの受給可能性を診断し、診断書の依頼方法や申立書の作成サポートまで行っています。
お気軽にご相談ください。