知的障害と発達障害で障害年金を申請する際のポイントとは?
障害年金は、病気や障害によって日常生活や就労に支障がある方が、経済的支援を受けるための大切な制度です。その中でも、知的障害や発達障害(自閉スペクトラム症、ADHD、学習障害など)を持つ方が障害年金を申請する場合には、他の障害と比べて少し異なる視点や配慮が必要になります。
この記事では、知的障害・発達障害で障害年金を申請するにあたり、押さえておきたいポイントや注意点、必要な書類、認定の基準などを詳しく解説していきます。
1. 知的障害と発達障害は障害年金の対象になるの?
まず、「知的障害」や「発達障害」は、障害年金の対象となる障害です。 ただし、その障害によって日常生活や就労に支障があることが前提条件になります。
■ 対象となる主な障害名
- 知的障害(IQ70以下が目安)
- 自閉スペクトラム症(ASD)
- 注意欠陥・多動性障害(ADHD)
- 学習障害(LD)
なお、障害年金では「発達障害」という名称は使われておらず、診断書上は「精神の障害」として取り扱われます。
2. 知的障害・発達障害の等級と認定のポイント
障害年金では、「障害の程度」に応じて1級、2級、3級(厚生年金のみ)のいずれかに認定されます。
等級 | 認定の目安 |
---|---|
1級 | 常時の介助が必要。対人関係や意思の表現が困難。 |
2級 | 日常生活に著しい制限。社会生活や仕事はほぼ不可能。 |
3級 | 一部の社会的適応は可能だが、継続的な就労は困難(厚生年金のみ) |
● 認定で重視されるのは?
- 日常生活にどれだけ支障があるか
- コミュニケーション能力や対人関係
- 就労の継続性や支援の必要性
学校生活や職場での適応状況、家族の援助の有無など、生活全体から総合的に判断されます。
3. 初診日の考え方と重要性
障害年金の申請では、「初診日」が非常に重要な意味を持ちます。初診日とは、その障害に対して初めて医療機関を受診した日を指します。
● 知的障害の場合
基本的に生まれつきの障害とされ、原則として生まれた日が初診日とみなされます。よって、保険料納付要件は不要で、「20歳前障害」としての申請になります。
● 発達障害の場合
発達障害は成長過程で診断されることが多く、初めて精神科や小児科などを受診した日が初診日になります。
この日が、障害年金の加入要件や受給資格の判断材料となるため、医療機関の証明書が必要です。
4. 診断書は精神の障害用(様式120号の4)
知的障害・発達障害の診断書は、「精神の障害用」の様式(120号の4)を使用します。診断書では、以下のような項目が記載されます。
- 病名・診断名
- 発達の遅れ、言語・認知能力
- 対人関係や適応能力
- 日常生活の状況(食事・移動・金銭管理・意思伝達など)
- 医師の所見
診断書は、申請時の状況に合わせて記載してもらうことが重要です。実態に合った内容で記載してもらえるよう、本人や家族が医師に状況を丁寧に伝えることがポイントです。
5. 「病歴・就労状況等申立書」の作成も重要
診断書だけでなく、「病歴・就労状況等申立書」も申請には欠かせません。この書類では、以下のような内容を記載します。
- 学校生活や集団生活の様子
- アルバイトや就職の経験
- 対人関係でのトラブルや配慮が必要な点
- 家族の援助の有無
- 福祉サービスの利用状況(B型作業所、グループホームなど)
特に、就労経験や日常生活の困難さについて、できるだけ具体的に書くことが審査のポイントになります。
6. 社労士に依頼するメリット
知的障害や発達障害の場合、ご本人が申請手続きを行うのが難しい場合も多く、家族にとっても大きな負担になることがあります。
そんなとき、障害年金専門の社会保険労務士(社労士)に相談することで、以下のようなメリットがあります。
- 初診日や必要書類の整理
- 医師への診断書依頼サポート
- 病歴・就労状況等申立書の作成支援
- 審査に通るためのポイントを押さえたアドバイス
- 不支給になった場合の再申請や審査請求対応
正確かつ実態に即した申請書類を作成することが、障害年金受給の大きな一歩です。
まとめ
知的障害・発達障害で障害年金を申請する際には、
- 初診日の確認と証明
- 診断書(精神の障害用)の具体的な記載
- 就労や日常生活の実態を正しく伝える
- 病歴・就労状況等申立書の工夫
- 必要に応じて社労士の専門サポートを活用
といった点が大切です。
申請は一度きりのチャンスではありませんが、最初の申請でしっかり準備することが大切です。ご不明点やお悩みがある方は、ぜひ障害年金に詳しい社労士にご相談ください。