障害年金と生活保護|どちらを優先すべきか?併用のルールとは
障害を抱えている方の生活支援には「障害年金」と「生活保護」という2つの制度があります。いずれも国が行っている重要な制度ですが、「どちらを優先すべきか?」「併用はできるのか?」といった疑問をお持ちの方は少なくありません。
今回は、障害年金と生活保護それぞれの特徴を整理したうえで、制度の違いや優先順位、併用時の注意点についてわかりやすく解説します。
◆ 障害年金と生活保護の基本的な違いとは?
制度名 | 主な目的 | 支給要件 | 支給される金額 | 優先度 |
---|---|---|---|---|
障害年金 | 障害による所得保障 | 保険料納付+障害等級要件 | 年金制度により異なる | 高い |
生活保護 | 最低限度の生活保障 | 資産・収入が一定以下であること | 生活費・家賃など実費補填 | 障害年金より後 |
● 障害年金は「保険」
障害年金は、公的年金制度の一部であり、「国民年金」や「厚生年金」に加入している間に初診日がある病気やケガにより一定の障害状態になった場合に受給できる、“保険としての給付”です。
そのため、障害の程度や年金加入歴に応じて支給額が決まり、生活費全体を賄えるとは限りません。
● 生活保護は「生活の最後の支え」
一方の生活保護は、どんな人でも収入・資産・扶養関係等を基に生活困窮が認められた場合に限り、最低限度の生活を保障する制度です。
生活保護は、原則として他の収入(障害年金や労働収入など)を考慮したうえで、足りない分を補うという位置づけになります。
◆ どちらを先に申請すべき?
結論から言えば、障害年金を先に申請すべきです。
理由:
- 生活保護は「他の制度より後に利用すべき」と法律で定められている(“後発給付”の原則)
- 障害年金は受給条件を満たせば権利として受け取れる
- 生活保護の申請時に、障害年金の申請を指示されることがある
例:
生活保護を受けている方が、後日、障害年金を受給できるようになった場合は、年金が「収入」として扱われ、生活保護費が減額されるか打ち切りになります。
◆ 障害年金と生活保護の“併用”はできる?
併用(同時受給)は可能ですが、次のような形になります。
● 実際の運用は「障害年金+生活保護費」
障害年金の額が少なく、生活保護基準額に満たない場合、その不足分を生活保護で補うという形で併用されます。
例:
- 地域の生活保護基準額:月13万円
- 障害基礎年金2級(月額約6.5万円)を受給中の場合
→ 不足分6.5万円を生活保護費として支給
このように、あくまで生活保護は「足りない部分の補填」として位置づけられます。
◆ 併用時の注意点
1. 障害年金は「収入」として扱われる
生活保護では、障害年金を含めた全収入を申告する必要があります。年金をもらっているのに申告していない場合、不正受給とされ返還や制裁の対象となる恐れがあります。
2. 遡及支給がある場合は返還義務も
障害年金の審査が長引き、過去分が一括で支給される「遡及支給」がある場合、すでに受け取っていた生活保護費との重複があると返還が求められます。
遡及支給で100万円以上が入金されたとしても、それまでの生活保護費分(たとえば数十万円)を返還しなければならない可能性があるため、注意が必要です。
3. 扶養義務者調査との関係
生活保護では親族等への「扶養照会」がありますが、障害年金は扶養義務調査が不要で受け取れる給付です。ご家族との関係や事情が複雑な方にとっては、障害年金の方が心理的・実務的負担が少ないといえます。
◆ 専門家に相談するメリット
障害年金の申請は書類の準備や通院歴の証明などが煩雑で、専門的な知識が求められます。さらに、生活保護との併用を考える場合、どちらをいつ申請すべきか、返還リスクはないかなど、慎重な判断が必要です。
こうしたケースでは、障害年金に詳しい社会保険労務士や自治体のケースワーカーと連携して進めることが重要です。
◆ まとめ
障害年金と生活保護は、目的も仕組みも異なる制度ですが、生活を支える重要なセーフティネットです。
- 原則として、障害年金を優先して申請
- 生活保護は年金で足りない部分を補う“最後の手段”
- 両方の制度の特性を理解したうえで活用を考える
- 専門家のサポートを受けると安心
今後の生活に不安を感じている方、制度の使い方に迷っている方は、お気軽に当事務所までご相談ください。丁寧にヒアリングを行い、あなたに最適な選択をご提案いたします。